相続税の生前対策について

相続税は生前対策を行うことで、実際の相続発生後にスムーズな相続税申告が可能となります。相続対策には大きく分けて、節税対策、納税資金の確保、争族対策の3つがありますが、ここでは税金に関する節税対策をご紹介いたします。

生前贈与による節税対策

生前贈与とは、被相続人が死亡する前に、お子様などの相続人等に財産を渡すことを言います。
生前に財産を減らしていく方法によって、相続発生時の相続財産の額を減らし、相続税の納税額を減らしていこうとする方法です。

但し、贈与税の税率は、相続税の税率よりもかなり大きく設定されています。気をつけないと、かえって多額の税金を払うという結果にもなってしまいますので注意が必要となります。

例えば、子供や孫などの合計5人に毎年110万円ずつ、10年間にわたって贈与した場合でも贈与税は0円です。合計で5,500万円もの相続財産を減らすことができます。(※ 3年内加算は考慮していません)

生命保険をつかった節税対策

生命保険を活用した相続対策は納税資金対策として利用され、かつ節税効果がある非常に有効な方法です。生命保険金の場合、500万円に法定相続人の数を乗じた金額は、相続税がかからないことになっています。これを、生命保険の非課税限度額といいます。

例えば配偶者と子の二人が相続人である場合、1,500万円までは、相続税がかからないことになります。このため、相続税の納税を予定している方は、生命保険の非課税限度額を利用して、相続人を受取人とした生命保険に加入する方法を選択した方がよいことは明白です。

また生命保険は、相続税の節税対策のみならず、遺産争いを防ぐ対策にもなるスグレものです。まず大前提として、生命保険金は、遺産分割の対象外の財産であり、受取人固有の財産になります。しかし実質的には相続財産であるとみなして、相続税申告の計算には含めるのです。

このため、仮に1億円の財産があり、これとは別に生命保険金5,000万円があった場合、相続人間で遺産分割協議を行うのは、1億円のみとなるのです。

そこで、財産を渡したい相続人と渡したくない相続人がいる場合に、生前に生命保険に加入し、受取人を渡したい相続人に指定しておくことで、後の遺留分の問題を避けることができます。

多めに財産を渡したい相続人を生命保険の受取人に指定おき、残りの財産は、遺留分を侵害しないように、遺言を作成しておくことで、相続が発生した場合の争いを回避することが可能となります。

また相続財産が自宅しかないといった場合にも、生命保険は大きな役割を果たします。自宅は長男に相続させる代わりに、生命保険金の受取人は次男にしておくことで、後々の争い防止に繋がります。

このように、生命保険は、相続税の節税対策のみならず、遺産分割のモメ事を防ぐ役割も果たす優れた対策手段です。まだ生命保険に加入されていない方も、すでに生命保険に加入されている方も、相続対策という観点から、再度生命保険への加入を検討してみるといいでしょう。

不動産の購入による節税対策

相続対策に興味のある方ならば、借入金で土地や建物を購入すると、相続税の節税になるという話を聞いたことがあると思います。これは、「借金をする」という行為自体は、相続税の節税に繋がらず、「不動産を購入する」という行為にカラクリがあります。

相続税の評価は、土地については路線価方式(固定資産税評価に税務署で決めた倍率を掛ける地域もあります)、建物は固定資産税評価額となります。

この土地の評価で使用する路線価は、通常の時価の約80%、建物の評価で使用する固定資産税評価額は建築価格の約60%程度です。

つまり、現金で1億円持っていれば、相続税評価額は1億円ですが、1億円の建物を購入すると、1億円×60%の6千万円になるのです。これが、不動産を購入するだけで、相続税対策になると言われている理由なのです。以下、事例で見てみましょう。

■事例・・・建物を購入した場合

○建物・・・購入価格(1億円)固定資産税評価額(6000万円=1億円×60%)
○借入金・・・1億円
ここで、借入金1億円(債務・マイナス財産)が増え、財産として増えるのは固定資産税評価額で評価した6,000万円のみですので、差額の4,000万円の総財産を圧縮する効果があります。

仮に、相続税率が30%とすると、6,000万円×30%=1,800万円の相続税が減額できることになります。つまり、現金で1億円お持ちの方は、借金をする必要はなく、現金で一括払いするだけで、不動産購入による節税効果が得られます。さらに、購入した不動産の利用方法に従って、各種の評価減の特例や規定がありますので(詳細は別項にて説明)、不動産の購入や活用方法が、相続税の節税対策においては重要となることが、ご理解頂けるかと思います。

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